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・・・・・・・・・・・・・・許して欲しい。





こうでもしなければ“奴ら”の目を欺けなかった。
“奴ら”は私を警戒している。昔のようにソフトの
中にメッセージを仕込むのは容易ではなくなって
しまった。だから、このような送信プログラムの形
で君にメッセージを送ることにしたのだ。これなら
絶対に気づかれることはない。





私の名前は中村光一。チュンソフトの代表だ。
新作ゲームの宣伝などでインタビューを受けるか
ら、顔くらいは知っているかもしれない。だが、君
が見慣れている『中村光一』は、私であって私で
はない。“奴ら”の仲間だ。私になりすまし、さも私
であるかのように振る舞っているのだ。




しかも、その偽者はどうやら二代目のようだ。つい
先日、この部屋唯一の娯楽であるテレビで見た
『中村光一』の姿が、以前の『中村光一』と微妙
に異なっていた。どうやら、あの『中村光一に扮し
た私』も、“奴ら”の捨て駒にすぎなかったようだ。





私はもう随分長いこと、この小さな一室に閉じ込
められている。私が監禁されていることを、外の
誰かに伝えることは、もう絶対に無理なことだと
諦めていた。だが、チャンスは突然やってきた。





ある日、ニセの私がこの部屋にやってきて、私に
ある要求をしてきたのだ。その要求は、かつての
私の作品である『ドアドア』のリメイク版を作り、こ
のゲームの中に収録しろというものだった。与えら
れた時間はたったの1時間。無論、私は不可能
だと答えた。だがニセモノの私はまるで聞く耳
を持たず、「1時間後にまた来る」と短く告げ、部
屋を出て行った。





おそらく1時間でできなければ、容赦ない拷問を
するつもりに違いない。私に選択肢はなかった。
やるしかなかった。部屋の隅で埃をかぶっていた
PCを引っ張り出して、必死にプログラムを書い
た。30分が経過したところで、なんとかプログラ
ムを書き終えた。テストプレイをしてみた。細かい
部分は再現できなかったが、とりあえず動く。よ
かった。





しかし、久しぶりに遊ぶ『ドアドア』のなんと難しい
ことか。20分ほどムキになって遊んでしまった。
その時だ。私の頭にあるアイディアが浮かんだ。こ
のプログラムに、メッセージを隠すことはできな
いかと……。いや、ただ隠すだけでは“奴ら”にバ
レる。うまく気づかれないように仕込まなくては。そ
こで私は通信プログラムを入れることにした。こ
のやり方なら、おそらく問題はない。





今、まさに今、私は君の家のWiiからの信号を受
け取った。折り返し、私は君にこのメッセージを書
いている。正直に言えば、成功するとは思ってい
なかった。でも、成功したのだ! 今、私は興奮
で指先がふるえている!





この通信が、私と外の世界をつなぐ唯一の手段
だ。お願いだ。どうか、これからもずっと、このソフ
トを手元に置いておいてほしい。そして、時々で
いい、このソフトを起動して、私との通信が生き
ているか確認をしてほしい。いずれ“奴ら”の陰
謀について語る日も来るだろう。そのときが来る
まで、決してソフトを手放さないでくれ。このゲー
ムを遊んでくれた君に感謝する。中村光一


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